昨晩お世話になったオイラーの定理(仮称)を証明してみる

昨晩のエントリ

で使ったオイラーの定理(仮称)*1について,道具として使ってもいいけれど,どうせなら使っている道具について調べてみたい.ということで,無謀にも,これの証明に挑戦してみる.

オイラーの定理(仮称)は,以下のとおり.

(1 + \frac{a}{x})^x < e^a ただし,x > 0 かつ a \ne 0 ... (1)

僕の手持ちの道具は少ない.expが出てきたらとにかく対数を取れ,という教えに従い,両辺の対数を取ってみる.対数は単調増加関数なので,底が0であれば,X < Yのとき log(X) < log(Y).今回はeを消したいので,自然対数を取る.

x ln (1 + \frac{a}{x}) < a

左辺のxを移項する.

ln (1 + \frac{a}{x}) < \frac{a}{x}

お.\frac{a}{b}という項が出てきた! なんだか解けそうな気配がする.
とりあえず,ここで気持ちを落ち着ける.\frac{a}{x} = Aとおけば,あとは

ln (1 + A) < A ... (2)

を示せればよい.なんだか成り立ちそうな気がするし,頑張れそうな気がする.とりあえずここで図を描いてみる.

この図で黒実線はAとln(A).赤実線はln(1+A)を表している.ln(1+A)はここに描かれているようにln(A)をAの負方向へ1平行移動した曲線になっている.

さて,この図からln(A+1) < Aであることはわかるけれど,もう少しきちんと証明しておきたい.

ここでしばらくうんうん考えて,傾き,すなわち微分を取ればよいことに気がついた.というわけでln(1+A)の微分を計算してみる.対数ln(x)の微分は1/xなので,合成関数の微分法を使って,

\frac{d}{dA} ln(1 + A) = \frac{1}{1 + A}

と求めることができる.右辺の微分は当然1なので,あとは

\frac{1}{1 + A} < 1 ... (3)

が述べるだけ.

両辺が等しくなるのは,A = 0のとき.A = 0になるのは,a = 0のときだけで,今回はa \ne 0としているので,等号は成り立たない. 等しくならず,不等号にイコールは含まれない.(2011-04-09 niamさんのご指摘により訂正)

Aが正の場合は,不等号は明らかに成り立つ.

Aが負の場合 (x > 0なので,a < 0の場合) には少しややこしい.まず,A = -1のときは,0で割ることができないので未定義.(x = 1, a = -1のとき存在してしまう.えー?) また,Aが (-1, 0) の範囲に存在する場合,左辺は1以上となり,(3)式は成り立たない.これも,たとえばa = -1,x = 2のとき存在してしまう.

どうやらこの方法では,a \ne 0という条件において(1)式が成り立つことは証明できなさそうだなぁ.

ただし,a > 0, x > 0の条件においては,(2)が成立し,それより(1)が成り立つことが証明できる.(証明いったんおわり)


さて,途中まで「解けた!」と思って喜んでいたのだけれど,意外なところに落とし穴があった.定義域には慎重にならなければならないという教訓.

本当にa \ne 0の条件で成り立つのだろうか? オイラーの定理 (仮称) の一般名称がわかれば,サポートベクターマシン入門以外のソースも調べることができるのだけれど.

なんだか最近は現実逃避に手元にある証明が簡単な証明をしている気がする.実は昨日は,相加平均,相乗平均,調和平均の関係をJensenの不等式を使って証明してみたのだけれど,それはまた後日.など無駄な引きを作ってみる.

*1:一般的な呼称がわからず,ウェブでは調べることができなかった