エンジニアが30歳までに身につけておくべきこと
- 作者: 椎木一夫
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2005/10/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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(2012-08-16読了)
夏休み読書シリーズ第二弾.書店で見かけて30歳を目前に思わず手に取ってしまった.著者は日立の研究所に20年勤めた後に大学教授になったという経歴の持ち主.主に企業時代を振り返って,若手の技術者がどのような心構えで過ごすべきかといことについて書かれている.
本書における20代の間に身に着けておきたいこととして,エンジニアとしてのコンピテンシーを形成することを挙げている (p.30)
- 知識
- 問題解決能力 (一部)
- (ここから上は目に見える.ここから下は目に見えない)
- 問題解決能力 (残り)
- 知的所有権
- 問題発見能力
- プレゼンテーションスキル
- コミュニケーションスキル
- 人間力
- 実行力,折衝力,協調性,倫理観,リーダーシップ
これをまとめると,エンプロイヤビリティーすなわち「雇用される能力」と呼ぶことができるのだという.ひらたくいえば「ずっとうちにいてください」と思われるか「一億円を払ってでも来てほしい」と思われるか,ということらしい.
ここまでは割とよく聞く話だと思うが,実際にこれらをどう鍛えるかということについて,そこまで詳しく書かれていなかったのが残念.
企業における研究開発業務に携わる心構えとしては,以下の2つの段落が印象に残っている.
『広辞苑』によると、技術とは「科学を実地に応用して自然の事物を改変・加工し、人間生活に役立てること」とあり、当然、技術者つまりエンジニアとは「これを職業とする人」のことである。つまりエンジニアは物理や化学、数学をはじめとするいろいろな知識を総動員して、世の中の役に立つために何らかの目的を達成しようとする人たちの総称である。
(pp.37-38)
これに続き,以下のように述べている.
ところで、研究とは「よく調べて考えて真理をきわめること」(『広辞苑』岩波書店) である。しかし、会社は必ずしも『広辞苑』的な研究を歓迎しない。なぜなら、真理が分かったところで、それだけでは飯が食えないからである。どういうわけか『広辞苑』には、「技術者」という見出し語はあるが、「研究者」という見出し語はない。勝手な解釈をすれば、「研究は職業としては成り立たない」ことを意味しているのではないか。もちろん、真理をきわめることは重要だし、真理が分かることで初めて物事が進む面もあるが、真理が分かったところで、人間は霞を食って生きていくわけにはいかない。今後の日本が食っていくためには、研究者ではなく「優秀なエンジニア」が必要なのだ。日本が目指すべき道は技術立国であって、研究立国ではない。
研究者と呼ばれる人たちは、単に知的好奇心を満たすために「研究のための研究」をしがちだが、それはエンジニアには許されない。エンジニアは必ず目的を持って研究する。そのマインドの違いが重要である
(pp.51-52)
ふむ,そのとおり.サイエンスをする人は研究者ではなく,科学者ではどうだろうか.そういえば,自分はいつからか研究者といわず (研究していないのもあるが) 技術者という言葉を自然と使うようになっていた.工学系の研究者であれば根底には役に立ってナンボという思想があると思うので,工学系研究者は技術者に含まれると思っている.
個人的には第6章の「知的所有権について強くなろう」という部分が印象に残った.企業で研究開発をする人はここだけでも読むとよいかもしれない.出願する意味,特許取得する意味,しない意味,そして特許の要件とはということについて5分で理解できる内容でよくまとまっている.
自分用メモ
- オンリーワンはナンバーワン
- 研究者は最高データを自慢し,エンジニアは最悪データを尊重する
- キャリア・アンカー
- I型能力,T型能力,Π(パイ)型能力
- 聞き役になること,相手に関心を持つこと (p.148)
- ハロー効果 (p.182)
- 「新規性と進歩性を満たす (発見ではなく) 発明」であること (p.247)