エンジニアとしての生き方

エンジニアとしての生き方  IT技術者たちよ、世界へ出よう! (インプレス選書)

エンジニアとしての生き方  IT技術者たちよ、世界へ出よう! (インプレス選書)

(2011-04-03読了)

以前からブログを読んでいたけれど,本になると知って購入.

技術系の人間,特にソフトウェアエンジニアを目指す学生にお薦め.
本書は,副題にあるとおり,製造業方式である日本のソフトウェア業界の問題とソフトウェアエンジニアへの冷遇に関する著者の意見と,エンジニアは積極的に世界に出ようというメッセージが込められている.とにかく英語を勉強しようということが繰り返し述べられている.


本当に「苦痛」なら、その仕事はあなたに向いていないかもしれない (p.166) はそのとおりだと思う.マイクロソフト時代の「なんでも2週間で身に着けてみせる」と言っていた同僚を解説していたけれど,そのように,新しいものをどんどん吸収する力,適応力が大切だと書いている.

これは,ネット普及によるノウハウのコモディティ化 (pp.193-194) と書かれているとおり,以前までそのノウハウを持っていることが付加価値になったようなものが,ネット普及によって,ウェブでノウハウを吸収することが可能となり,簡単にキャッチアップできるようになってしまった.

これについて思ったことは,そのような新しい情報に早くキャッチアップする力 (適応力) とは別に,コモディティ化されないような自分だけの強みとなるノウハウをきちんと蓄積していくということが大切だと思った.技術者の差別化は後者のノウハウの量で行えるのではないかと感じた.


もうひとつ気に入った言葉.

糸井重里の「ボキャブラリーというのは『どれだけむずかしい言葉を知っているか』ではなく、『どれだけやさしい (人に伝わりやすい) 言葉を知っているか』という意味なんです」という言葉は本当に正しいと思う。
(p.208)

これは本当にそう思う.


本書で一番気に入ったのは,ベンチャー企業に関するブログを書くJohn Cook氏のインタビューで著者が「良いアイディアを持ちながらお金を集められず消えていくベンチャー企業に何かしてあげられないか」という質問に対する回答.

「それは必要ないと思うな。ベンチャー企業の経営者に一番大切な能力は、『必要なものは何とかして手に入れてしまう能力』だよ。起業資金ぐらい自分で集められない起業家に、ベンチャー企業が経営できるとは思えない。」
(p.234)

なるほど,これは至言である.幸い僕は自分で研究資金を集める必要がない立場ではあるけれど,これはそっくりそのまま研究者に当てはまると思う.

また,これを読んで思ったことはこれの技術者バージョン.「せっかく良いアイディアなのに消えていってしまうアイディアをどうにかすることができないか」と質問されたら僕はこう回答するだろう.

「技術者に一番大切な能力は,『アイディアを何とかして実現する能力』だよ.アイディアを実現する能力がない技術者に技術が作れると思わない.

技術を「つくる」能力である.アイディアを実現すると聞くとプログラミングがまっさきに思いつくけれど,それに限った話ではない.特殊なデバイスが必要になるかもしれないし,アイディアを実現するためにまわりを説得して動かす必要があるかもしれない.

巻末に「ビル・ゲイツの面接試験」という付録があり,マイクロソフトの入社試験の際に行われるクイズとその解答が書かれている.これはすぐに答えを見ずにじっくり考えみようと思った.

本書で紹介されている文献リスト