クオリア入門
- 作者: 茂木健一郎
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/03/09
- メディア: 文庫
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(2007-04-30読了)
茂木健一郎の著書を初めて読んだ.
うーん,予想通り.けれど読んでよかった.
前提に仮説が多いため,その点を理論的といわれてもいささか同意しかねる部分が出てくる.
文中「おそらく」という表現が多い.脳科学者と表現しているが,「科学者」ではないような気がする.
ニューロン群がこのような働きをしているのではないか,という仮定をよく引き合いに出しているが,
そもそもニューロン単一の働きは解明されているものの,大量のニューロンがネットワークを組んだときにどのような働きをするかがわかっていない.
ニューロン群の振る舞いについても,観察の結果,としかいえないが,とても自信を持って述べているのはなぜだろうか.
クオリアが普遍的なものであるためには,人間の脳の構造の中に
「あるニューロンの発火パターンは,心の中のある表層コードを表している」
ということが遺伝的に決定されなければならない.
文化的・社会的によらない部分をクオリアを取り出すことによって引き算して求めることができるはずだが,
「フランス人は肩が凝らない」という話を説明することができない.
サピア・ウォーフの仮説にあるとおり,やはり我々は言語という窓によって外界を認識していると考える.
すなわち、私たち日本人とイヌイットたちの白のクオリア自体のレパートリーは基本的に同じであり、それらのクオリアに向かって貼られる特別に用意された言葉のラベルという志向性の細かさがちがうのだと考えることができるのである。
(p.272)
本当にクオリアは基本的に同じなのだろうか?
そもそも区別することができなければ,それは「分かる」とはいわない,つまり「認識」しているとはいえない.
もしかしたら脳の中のクオリアは反応しているかもしれないが,それにラベルを貼ることができなければ,
そのクオリアは存在しないということに同義なのではないか.