企業の研究者をめざす皆さんへ

企業の研究者をめざす皆さんへ―Research That Matters

企業の研究者をめざす皆さんへ―Research That Matters

(2009-12-27読了)

IBM東京基礎研前所長の丸山氏による著書.

研究員に向けたレターをまとめた構成になっている.読み物として,まるで所長 (所長なんだってば) のお言葉のように楽しく読むことができた.
副題であるResearch that Mattersとは,世の中に影響を与える研究という意味.研究としても高い価値があり,かつ役に立つ技術であること.これは大学ではなく,企業だからこそ目指す研究像だと思う.

個人的に気になったのは,本書の中で成果をまとめることの重要性について何度も強調していた.研究の区切りをつける意味で,情報共有のために,研究の引き継ぎのために,などなど.
研究の場合,論文という形になることが多いのだろうけれど,特許然り,テクニカルレポート然り,研究のまとめ方は論文だけではない.新規性があるわけではない,知財の問題でまだ公開できない,という知見について社内に向けたレポートという形でも良いから定期的に研究成果をまとめてみようと思った.

また文中で「どんなにくだらない論文でも,たくさん論文の出てくる研究所から,創造的な仕事が生まれてくる」というフィールズ賞受賞者の広中平祐氏の言葉を引用している.
これについては音声認識の大家である古井先生が「論文ではなくブログにじゃんじゃん書きなさい」という旨の発言をされており (2009-12-26 - IHARA Note) ,表現は違えど「手数が重要」という観点では同じことを言っていると認識している.

「企業の研究者である皆さんへ」というタイトルの方が正しいような気がした.いや,僕はまだ卵なので,そういう意味ではこのタイトルは正しいか.