武器としての交渉思考
- 作者: 瀧本哲史
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/06/26
- メディア: 新書
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(2014-01-26読了)
武器としての決断思考 と同時に買って半年ほど放置されていたので読んだ.
1つ目の大切な概念としてBATNA (Best Alternative To Negotiated Agreement) という概念が出てくる.すなわち現在の合意条件に対して最善の選択肢である.たとえば,店頭で見かけた商品がAmazonでより安い値段で売っていた場合にはそのBATNAを交渉材料として使える.交渉を始める前に多くのBATNAを用意しておくのが交渉を有利に進める上では大切.
裏を返せば「BATNAを一切持っていない」ことが相手にバレると足元を見られてしまう.何かの購入に関しては値下げは期待できないだろう.
相手のBATNAを知り,相手に自分のBATNAを悟られないことが基本原則.一方で自分のBATNAを提示することで交渉を有利に進める場合には,相手が自分のBATNAをきちんと認識できるよう伝えるべし.
もうひとつの概念として ZOPA (Zone Of Possible Agreement) を認識すること.もしかしたら,お互いの希望にZOPAが存在しない場合がある.そんな状況で交渉を進めてもお互い疲れるだけ.
3つ目はアンカリング.最初の提示条件によって相手の認識をコントロールすること.これには大統領選の写真利用の話が出てくるのだけれど,「トムソーヤのペンキ塗り」もある意味のアンカリングなのではないか.他の例としては,失敗をした際に間違いの責任追及の話ではなく,解決策の具体案を出すことによってそちらに論点を集中させるという方法.アンカリングは普段から使えると思うので,こっそり練習していこう.
あと真ん中あたりで書いてあった "就職活動の場合は採用担当に「自分を取らないと損」という判断を下させる交渉である" というところは本当にそう思った.歳を取って学生さんたちと話していると「〜したい」「〜ということがやりたい」という言葉はよく聞いて,「自分が採用担当だったらそんなこと言われて採用したいと思う?そもそも採否の判断ができないよね」というようなコメントをした記憶がある.
社会に出て驚いたのは「相手にYES/OKと言わせるための道筋を意識していない」人が多いということ.自分の子供もそうなってしまうのかなぁと思うと,物をねだられたら「なぜ親がそれを買い与える必要があるのか」ということを説得させるように教育しようか.それはそれでたいそう理屈っぽい性格になりそうだけれど.
本書はよくまとまっており,良書だと思う.しかし,この本を読んで目からうろこが出てしまう人はある意味危険信号かもしれない.
というようなことを書いて武器としての決断思考の読書記録を読みかしたら,同じような締め方をしており,本人はそのことをすっかり忘れていた.おじいちゃんそれ何度も聞いたわよ状態である.