グラスホッパー

グラスホッパー (角川文庫)

グラスホッパー (角川文庫)

2008-07-06読了)

鈴木,鯨,蝉,という復讐を誓う男と殺し屋2人の視点を切り替えながら進むストーリー.そして謎の殺し屋「押し屋」.
「自殺屋」鯨が話しかけると,相手は絶望的な気分になり,言われるがまま自殺してしまう.この部分の描写をもっとドロドロしたものにした方が個人的にはよかった.
描写として文句があるわけではないけれど,人がたくさん死ぬ割にはあっさりしている.そういう意味では,さらっと読めていいわけだけれど.


架空の映画監督ガブリエル・カッソの「抑圧」という作品の話は面白かった.これについては,ネット上で色々と感想を書いている人がいるので割愛.

「人形でいいので,自由にしてください」
(p.67)


あとがきで書かれているとおり,伊坂作品では他の作品の登場人物が出てくることがある.本作でも「オーデュボンの祈り」がちらりと出てくる.

「そうそう,話は変わりますが,最近,読んだ本にこういうのがありました.未来は神様のレシピで決まる,と」
「未来? レシピ?」
「ようするに,先のことは自分たちの範疇の外で,すでに決まっている,ということかもしれません.その本の中では,案山子が喋って,そんなことを言うんですよ」
(p.166)


馴れたからなのか,それともこの作品が合わなかったのか.伊坂作品の中ではそこまで好き,という感情が出てこなかった.けれど,読み直してみると,ところどころでいいことを言っている.