チルドレン

チルドレン (講談社文庫)

チルドレン (講談社文庫)

(2008-07-05読了)

不思議な魅力を持った「陣内」を中心に展開される数々の短篇集をまとめた小説.ひとつのストーリーとして読むこともできる.

主人公の陣内は,インザプール,空中ブランコの主人公である精神科医伊良部のような印象を受けた.


チャイルドとチルドレンの違い,のこのくだりはどこかで使おう.

それは事実だ.遊び半分で非行に走り,家裁に来た途端に,「親が悪い.親の愛がない」と言い出す子も中にはいた.ただ,正直なところ,僕はそういう子供たちについては楽観視している.そもそも彼らは一人きりでいる時は問題がなくとも,集団になると歪むのだ.陣内さんは,「子供のことを英語でチャイルドと言うけれど,複数になるとチャイルズじゃなくて,チルドレンだろ.別物になるんだよ」とよく言った.そういう性質なのだ,と.
(p.115)

途中で出てくる芥川龍之介侏儒の言葉」の引用が気に入った.

「道徳は便宜の異名である.「左側通行」と似たものである」
(p.86)

侏儒の言葉は,青空文庫で全文が読める.


後半の,盲目の友人永瀬の視点で描かれた「イン」は面白かった.伊坂幸太郎の描写の巧さが出ている.
伊坂幸太郎「砂漠」が好きな人に特にお薦めする作品.