「世界征服」は可能か?

「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

(2007-07-07読了)

ここまでバカっぽい話が本になっているだけで面白い.
何を隠そう自分だって大学の情報処理実習の授業の最終プレゼンで世界征服の実現可能性について発表したので,著者に非常に共感する.


世界征服の実現可能性よりも,主にアニメ世界における「悪の組織」の分析と考察がメイン.
前半では,いくつかのパターンに分類し,それぞれの組織の特徴と問題点などを考察.
中盤では,特に資金に着目して,悪の組織を運営するよりも,資金獲得のための副業の方が経済的には豊かになれる可能性が高いと論じている.
ここらへんは「空想科学読本」に近いスタイルで書かれている.


ひとつ残念なのは,著者の専門ではないだろうが,ここらへんの計算をもう少し厳密にやってくれると面白かった.
例えば何かモデルをつくって,


トヨタが悪の組織によって運営されている会社と考えると,その悪の組織は世界征服可能である」


というような話に繋げてくれると,現実に世界征服を夢見ている人々に夢を与えるのではないか.
最終的には「階級社会」の話になり,結局のところ南北戦争で南方が敗北したように,独裁は必ずしも幸福ではない,という結論に結びつけている.
本書において著者は「世界征服することだけを目標にすると燃え尽き症候群になる」と述べ,世界征服した後について様々なモデルを提案,考察している.
個人的には「どうすれば世界征服することができるのか」という目標一点に絞り,厳密な(アホらしい)計算を行った結果をまじめに論じるというスタイルの本も読んでみたいなぁと思ったりした.


イギリスのサルーンとパブの違いの話はとても面白かった.また,ホテルのジュースがなぜあんなに高いのか,ということに"日本人が納得できない"理由もなんとなく理解できたような気がする.