崖っぷち弱小大学物語

崖っぷち弱小大学物語 (中公新書ラクレ)

崖っぷち弱小大学物語 (中公新書ラクレ)

(2012-01-25読了)

生駒日記で紹介されていて気になったので読んでみた.

さていわゆる一流大学といわれる大学以外の大学では,どういう状況になっているか,学長を務めた著者によるエッセイ.自分自身が大学教員ではないためか,すごいなぁ,大変だなぁと思う一方で別世界のような話でぴんとくるものがなかった.

ただ,ヒトの社会とリーダー (p.162) の「中間管理職の論理」は強く印象に残った.

1 いまいる集団 (会社) を離れて、いまより多くの資源 (収入) を得られる可能性は少ない。
2 必ずしも上司を信頼しているわけではないけれど、資源獲得のために最低限の義務を果たしながら我慢して現状維持を図る。より積極的には、より多くの資源を得るために一層奮励努力する。ここでの資源とは収入だけでなく、肩書とか社会的地位とか名誉など、現代社会では複雑な要素も絡み合ってくるだろう。
さらに言うなら、
3 上司、とりあえず中間管理職とは、さらに上から預かった資源を管理する、すなわち多少なりとも権力を握っている存在である。ここでの資源は、主として人材ということになる。
4 したがって上の受けがよければ、部下の信頼を得なくても当面はその地位に居座り続けられる。これを私は「中間管理職の論理」と呼んでいる。
さらに、さらに言うなら、
5 資源 (権力) を握ると下からの声は聞こえ難くなる。なぜなら安定しきった現代社会では、不利になることを覚悟の上で、言い換えれば、得られるはずの資源をわざわざ減らしてまで上に声を届かせる無謀者は、決して多くないからだ。
(pp.163-164)

ある意味当たり前のことを書いているのだけれど,こうやって文章として読んだことがない気がする.ではどうすれば中間管理職の論理を行使するだけのリーダーにならずに済むのだろうか.著者は

真のリーダーになるためにはどうすればいいだろうか。難しいようで、じつは簡単なこと。部下の信頼を得ること。この人と一緒に働きたいと思われること。下の声を積極的に聞こうとすること。まだまだあるがいまはこれぐらいにしておこう。
(p.164)

と書いているが,いやいや難しいのではないかと思ってしまう.今,自分は組織の中で末端の人間なので部下を持たないけれど,自分が上司になったときに中間管理職の論理を行使しないように気をつけたい.