大学生のためのリサーチリテラシー入門

大学生のためのリサーチリテラシー入門: 研究のための8つの力

大学生のためのリサーチリテラシー入門: 研究のための8つの力

(2011-09-09読了)

研究室に入った学生/入る前の学生におすすめの本.

リサーチリテラシーとは研究を遂行するために身につけておくべき基礎能力のこと.問題の解き方を教わるそれまでの勉強と違い,文理問わずゼミ/研究室に入ると,自分で課題を見つけて,自分で解く必要がある.大なり小なり指導教官や先輩のサポートはあるだろうが,それまでの答えが用意された問題とは異なり,多くの学生が「何をすればよいのかわからない」「何がわからないのかわからない」状態に陥ると思う.

自分のことを振り返るとまったくそのとおりで,やる気をずいぶん空回りさせてしまったと感じている.きちんと自分が何をするべきか,何が足りないのかということをもっと俯瞰できていれば過ごし方も変わったと感じている.

本書は研究に必要な力を以下の8つに分類して,それぞれについて解説している.

  • 聞く力
  • 課題発見力
  • 情報収集力
  • 情報整理力
  • 読む力
  • データ分析力
  • 書く力
  • プレゼンテーション力

どれも大切な力だと思うが,詳しい解説は本書に譲るとして,初めて学術的な情報を読み解く学生に伝えたいなと思ったのは5章「読む力」で紹介された学術的文章の構造のくだり.学術的文章は多少のバリエーションはあれど,基本的に下図のような構成で成り立っている.

問題 => 結論 (主張)
     ↑
    理由 (証拠の提示)

(p.111 図5-2 を参考)

論文や専門書を読むときには,この論理構造に落とし込むクセをつけると,「問題」とされている部分が過去の研究成果によって成り立っている「結論」で,その研究はその結論ありきで始まっていることに気づいたり,著者が提示している結論が,提示された理由ではどうしても導くことができないことに気づいたりできる.

このような考え方をクリティカルシンキング (略してクリシン) と呼んでいる.


理系のステレオタイプとして「定義は? 定義は?」とすぐ突っ込むキャラが描かれるが,こういう訓練を受けたからだと思う.論理構造に落とし込んで,「相手の主張は何か?」「なぜそう主張しているか?」というカタチに落とし込もうとするからではないだろうか.

各章にそれぞれの力を鍛えるための参考文献が挙げられているが,巻末に「読書ガイド」が用意されていて,8つの力を鍛えるための道しるべにもなる.

最近はブログでも研究室に入るときの心構えであったり,研究室に所属している期間を有意義に過ごすためのノウハウなどを解説しているものがあるが,本書はある程度のボリュームを体系立てて書いているので,研究室に配属された学生にまずお薦めしたい.

クリティカルクエスチョン (p.111)

クリティカルシンキングを働かせながら読め」と言われていきなりできるようになるものでもないので,学術的文章に疑問を投げかけながら読むヒントが紹介されている.

  • 第1段階: 議論の骨格を明確にする
    • (1) 著者は何を問題としているか?
    • (2) 著者の結論 (主張) は何か?
    • (3) 結論 (主張) を支える理由 (根拠) は何か?
  • 第2段階: 情報をはっきりさせる
    • (4) 言葉は曖昧でないか?
    • (5) 隠れた前提は何か?
  • 第3段階: 議論を評価する
    • (6) 理由は確かか?