研究発表のためのスライドデザイン

(2013-07-16読了)

研究発表についての指南本.こちらのブログで知った.3部構成ではあるが,自分の解釈では大きく以下の2部構成.

  • 第1部「わかりやすい」スライド構成にするために
  • 第2部「わかりやすい」スライドを作成する技術

第1部は割とどの本でも書かれている内容だが,第2部の具体的なノウハウの粒度の細かさに驚いた.たとえば,図の中の文字は塗りつぶしをすると目立つから文字だけにしろ,丸角の四角の角の大きさは揃えるべし,といった「え,そこまで気にする?」というレベルでノウハウを記述している.

これを本から得られるのはたいへん貴重だと思う.

今思うと,学生時代から先生や先輩にいろんな指導を受けてきたが,そういえばひとつひとつは具体的で時には細かすぎる指導だったように思う.しかし,ひとつひとつは細かくてもそんな指導を日々受けているうちに,自分の中でルール化され,抽象化され,気が付くと発表のレベルが上がっている.

きっと世の中の指導教官は同じことをそれぞれの学生に言っているため,100回以上同じことを繰り返してるのだろう.本書の著者も指導教官であるため,そういった世の中の指導教官の苦労を少しでも低減させるための本だと思う.

さて学生時代には先生や先輩にたくさん教わった.たとえば以下の指導がぱっと思い浮かぶ.今でも誰にどの場面で教わったか場面と顔が思い浮かぶくらいに強烈に印象に残っている.指導コメントを貰うと表面上は飄々しつつも裏ではけっこう凹んで,うじうじ反芻する性質だからということもある(笑)

  • 「えー,あー」絶対言うな.言った瞬間プレゼンの質が20%下がる.
    • 認知科学的な観点からけっこう認識率が落ちるらしい (受け売り)
  • スライドを変な箇所で改行するな.改行して1,2文字だけの行ができる場合には文字を小さくして1行に収めろ.
  • 線の太さに意味を持たせろ.
  • 表,グラフは読み方 (聴衆にどう解釈してほしいか) を必ず説明しろ.

上記のほかにもたくさんあるのだけれど,とにかく言われていることをまずは頑なに守るようにしているうちに,その他の点についても自然と気づくことができるような気がした.

気づけないのと気にしないのは違うと思う.ほとんどの研究発表指南本では「あとはスタイル」という割り切りで,本書のレベルまで細かいことを書いていないような気がする.そういう意味で細部にこだわる場合にどのような注意点があるのか,ということを丁寧に記述している意味で本書は貴重だ.


本書で印象に残ったのは「1分1スライドはOHP時代の話で時代遅れ.PowerPoint全盛期の今はあてはまらない.1スライド1メッセージの方が大切.」ということを述べている部分.最近では1スライド1分は時代遅れのような気がしていたが,このようにはっきりと述べているのは初めて見た気がする.