知的複眼思考法
知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社+α文庫)
- 作者: 苅谷剛彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/05/20
- メディア: 文庫
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(2011-10-11読了)
大学生のためのリサーチリテラシー入門に書かれていたクリティカルシンキングに関する本.タイトルにあるとおり,問題を多面的に眺めるための方法論が簡潔にまとめられている.大学生必読の一冊.
高校生までの勉強は基本的に答えがある.受験勉強などでひたすら答えを求める訓練を積んだ学生は,ただひとつの正解があると信じてやまない「正解信仰」に陥ると書かれている.これは,知らないことを検索すれば答えを得ることができる現代ではさらに加速するのではないかと心配している.自分がその傾向があるのだけれど..
本筋とは関係ないが著者はアメリカ留学の際に膨大な数のreading assignmentをこなし,大量の文献,論文を読んだ.しかし,かつての書き込みだらけの文献を読み直しても,なにひとつとして記憶に残っていないという.このくだりを読んで少し気分が楽になった.自分自身も学生時代からいろんな本をずいぶん読んできたつもりだが,自分の読書記録を読み返して「こんな本読んだっけ?」という感覚にしばしば陥る.しかし,どういう形で役立っているかわからないにせよ,著者がいうように多面的にものを見るのに役に立っているのだろう.
批判的読書20のポイント (pp.92-93)
- 読んだことのすべてをそのまま信じたりはしない
- 意味不明のところは疑問を感じる.意味が通じた場合でも疑問に感じるところを見つける
- 何か抜けているとか,欠けているなと思ったところに出会ったら,繰り返し読み直す
- 文脈を解釈する場合には,文脈によく照らす
- 本についての評価を下す前に,それがどんな種類の本なのかをよく考える
- 著者が誰に向かって書いているのかを考える
- 著者がどうしてそおんなことを書こうと思ったのか,その目的が何かを考える
- 著者がその目的を十分果たすことができたかどうかを知ろうとする
- 書かれている内容自体に自分が影響されたのか,それとも著者の書くスタイル (文体) に強く影響を受けているのかを見分ける
- 議論,論争の部分を分析する
- 論争が含まれる場合,反対意見が著者によって完全に否定されているのかどうかを知る
- 根拠が薄く支持されない意見や主張がないかを見極める
- ありそうなこと (可能性) にもとづいて論を進めているのか,必ず起きるという保証付きの論拠 (必然) にもとづいて論を進めているのかを区別する
- 矛盾した情報や一貫していないところがないかを見分ける
- 当てになりそうもない理屈にもとづく議論は割り引いて受け取る
- 意見や主張と事実の区別,主観的な記述と客観的な記述との区別をする
- 使われているデータをそのまま簡単に信じないようにする
- メタファー (たとえ) や,熟語や術語,口語表現,流行語・俗語などの利用のしかたに目を向け,理解につとめる
- 使われていることばの言外の意味について目を配り,著者が本当にいっていることと,,いってはいねいが,ある印象を与えていることを区別する
- 書いていることがらのうちに暗黙のうちに入り込んでいる前提が何かを知ろうとする
メモ
- 批判を単なるあらさがしで終わらせない.対象をよりよくする代案まで出すまでが批判
- 6つのなぜ? モトローラ社の社訓
- 禁止語のすすめ
- 何かを説明するときに,特定の専門用語の使用を禁止すること
- 3通りの説明ができて初めて理解する,という持論にぴったり
- その問題が解けたらどうなるか?
- 思考を止めないヒント
- 論理展開を疑う -> 事実を疑う