社畜のススメ
- 作者: 藤本篤志
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/11/01
- メディア: 単行本
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(2011-12-30読了)
なかなか強烈なタイトルの本.うまく内容をまとめられないけれど,サラリーマンはどのような考え方を持って会社勤めをすれば,自身の成長とモチベーションを持って働くことができるのか,ということについて著者の考え方をまとめた本.
読書記録を書いてみて,全然まとまらなかったのだけれど,以下の3点についてメモを書く.
- サラリーマンの「四大タブー」
- 守・破・離
- ダメな社畜とならないために
サラリーマンの「四大タブー」
人生は博打ではありません。少なくとも会社で働くという選択をした人の多くは、博打的な人生を求めていないはずです。しかし、昨今、サラリーマンとして生き抜くための処世術として目にするフレーズはまるで博打的な生き方を推奨しているかのようです。
「個性を大切にしろ」
「自分らしく生きろ」
「自分で考えろ」
「会社の歯車になるな」
これらを博打的というと、「個性を大切にして、どこが博打なんだ!」「自分らしく考え、生きて何が悪い!」「会社の歯車になれというのか!」と反論する方が多数いらっしゃるかもしれません。しかし、本書ではこの四つの言葉をサラリーマンの「四大タブー」と呼ぶことにします。つまり、サラリーマンの正しい姿とは、個性を捨て、自分らしさにこだわらず、自分の脳を過信せず、歯車になることを厭わない存在となることである。そう確信しているのです。
(pp.32-33)
これまたなかなか強烈な書き出しで2章を始めているが,これにより,著者の哲学をはっきりと打ち出している.しかし,入社式でこれを言われたら辞めたくなるなぁ(笑)
組織で生きることを選択しつつも,自分の我儘を貫こうとする人たちに対する強烈なメッセージだと思う.
守・破・離
「守破離」とは、人が成長していくプロセスの重要性を説いたものです。
「守」の段階では、師に決められた通りに動き、形を忠実に守る。「破」の段階では、「守」で身につけた基本に自分なりの応用を加える。そして「離」の段階では、これまでの形に囚われず、自由な境地に至る。簡単にいえばこのようなプロセスです。「守」が入社から若手時代、「破」が中間管理職、「離」が経営側もしくは独立、というのがアバウトなイメージだとお考えください。
(p.59)
守破離を説いたとされる世阿弥は,守破離の順番を絶対に守ることが大切とも説いたという.言われたことを忠実に守り,実行する会社における下積み時代などが「守」に相当する.この「守」なくして「破」以降のプロセスはないという.
本屋をにぎわせている実用書などでは,このようなルーティンワーク的な仕事は意味がない! もっと自分らしく! というようなタイトルのものが多く見受けられるが,実はそういう著者の経歴を見ると,かつて在籍した会社でしっかりと「守」のフェーズを経験していたり,また,そもそも天才と呼ばれるタイプで,凡人の参考にならなかったりする,というケースが多いので本を読むときは著者経歴に気を付けるべし,とも書かれている (pp.95-101).
ダメな社畜とならないために
本書を通じて割と強烈な書き方をしているけれど,最後の章では若手に対する具体的なメッセージを書いている.これだけ見ると,普通のノウハウ本のような内容.
感想
守破離の話を聞いて思ったことをメモ.
よく「自分の上司のやり方は古い.そんなやり方では今の時代に合わない.」というような若手の意見を聞くような気がする(本当にそんなことを言う人がいるのかは実際に聞いたことがないので,実は僕の妄想かもしれない).まぁ,ここではそう思っている若手がいると仮定する.
けれど,その上司(Aと呼ぶ)が若手の頃には,同じように "時代遅れ" と感じる指示を受けたのではないか.仮にAがAの上司の言うことをきちんと守り,「守」のフェーズを経て「破」のフェーズに到達することにより成果を出して今のポジションにいるという仮定が正しいとすると,上司の指示が時代遅れと感じても,忠実に守り,下積みを行うことで結果的には時代に合った仕事の進め方ができるようになり,成果を出せるようになると思う.日本に大企業は数多くあれど,いずれも創業時から利益を生んで成長してきた企業であり,その会社を支えてきた人物のひとりなわけだから,上司の言うことは一切役に立たない,ということはないと思う.(まぁ,どう見てもコイツは違うだろ,というダメ上司がいる場合もあるだろう.それはケースバイケース)
また,本書を読んでフラッシュメモリの発明者である舛岡富士雄氏のインタビュー記事を思い出した.
――日本のエンジニアを見て思うことはありますか?
現状に文句を言う人が多すぎると思います。会社の仕事を100%こなしたうえで自分の好きなことをやれと言いたいですね。与えられた仕事が満足にできない人は、新しいことなどできないと思います。
私が東芝時代にフラッシュメモリを開発したのは、本来のDRAM開発を終えた後の、プライベートな時間を使ってのことです。SGTもそうでした。「オレは本当は優秀なエンジニアなのに、会社がダメだから能力が発揮できない」などという人は、そんな言葉をいった瞬間に本人がダメになります。そもそも、自分のやりたいことが会社でできるなど思わないほうがよい。
(http://rikunabi-next.yahoo.co.jp/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=000500)
本書の守破離の話とは違い,こちらは「やることやってから物言え」「文句言う暇あったらやっちゃえよ」というスタイル.会社の「そもそも」「べきだ」論は棚に上げると,説得力がある.
人によっては,会社は自分のキャリアを磨くための環境であり,それ以上ではないという考え方もあると思う.その場合には会社は自分が所属する組織というよりも自分という商品を売ろう自営業的な考え方の方が近いのだろう.
企業 (特に大企業) の会社員は「社員心得之帳」(松下幸之助著) と併せて読んでもらいたい.ただし,(特に就活中の)学生は本書の内容を不適切に読み取ってしまうおそれがあるので読まない方がよいと思う.
- 作者: 松下幸之助
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2001/05/01
- メディア: 文庫
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