The Dip

The Dip: A Little Book That Teaches You When to Quit (and When to Stick)

The Dip: A Little Book That Teaches You When to Quit (and When to Stick)

(2011-03-15読了)

そこそこ評判になっていたので以前購入したけれど積読になっていたので読んだ.久々の洋書.平易な英語で書かれているが,知らない単語がちらほらあって,辞書を引きながら読んだ.やはり論文だけでは語彙がどんどん少なくなるなぁ..

サブタイトルに書いてあるとおり,「やめどき」について書かれた本.

If You're Not Going to Get to #1, You Might as Well Quit Now.

と書かれているように,とにかくNo.1になることが大切.後追いは,後手後手に回るというのが本書の立ち位置.これは頭ではわかるけれど,自分のことになるとなかなかできない大切なことだと思う.本書でもGEのジャック・ウェルチを引用している.ジャック・ウェルチは巨大になりすぎて,低迷していたGEにカンパニー制を導入し,業界1位か2位になれないカンパニーは次々と徹底という戦略を取った.


さて,現在取り組んでいる活動 (プロジェクト,職業,スキルアップ etc.) の努力値に対して得られる結果は以下の3つのカーブを描く.

  • Dip
  • Cul-De-Sac
  • Cliff

Dipとは,少し先に大きな凹みがあって,その後上昇するパターン.この凹みは,他者にとっての参入障壁になるため,正しいDipに取り組むことが#1になる秘訣というのが著者の主張.ケーススタディについては書かれているものの,何が自分にとってのDipなのかという具体的な判断基準については書かれていない.

Cul-De-Sacは結果が得られることのないまま行き止まりになるパターン.今すぐやめるべき.

Cliffはいったん結果が上がるものの,その先に崖があるパターン.これも避けなければいけない.

そんな3つのカーブを見極めて,やるかやめるかを判断することが成功の秘訣.

  • やめることは悪いことではない.やめることは失敗ではない.
  • 「やめどき」は始める前に決めておく
  • 「始める前にやめる」のが理想
  • 短期的な視点ではなく,長期的な視点で判断する


さて,

When a kid drops out of football or karate, it's not because she's carefully considered the long-term consequences of her action. She does it because her coach keeps yelling at her, and it's not fun. It's better to stop.

Short-term pain has more impact on most people than long-term benefits do, which is why it's so important for you to amplify the long-term benefits of not quitting.
(p.53)

という部分を読んで,日本人はこの点に関しては,少し違う思考をするのではないかと思った.自分が中学生,高校生の頃は部活動を辞めるということは,なんだか抜け忍になるくらいありえないことだった.(最近の子供はわからないけれど..)

日本では「継続は力なり」と言われるように,"Never quit" は日本のお家芸のような気もする.ただ,これは悪いことばかりではない.真の意味で long-term vision がある人間などおらず,何が本当のDipなのかは誰にもわからない.その結果,当初意識していたわけではないが,継続して気が付いたらDipを超えていた,という嬉しい誤算によるDip超えということが起こりうるのではないか.

ただ,悲しいことはその時間が経つとDipだったものがCliffになり,Cul-De-Sacになりうる.その際に,Dipを超えた先人が後輩に対してやみくもに継続しろ,という誤った教育をすることが起こりうる.特に日本人については,こういうことが起こりうるのではないかと感じた.

この手のDip超えに関してはMalcolm Gladwell "Outliers"にあるような「1万時間の法則」の話題の方が近いかもしれない

Outliers: The Story of Success

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和訳も出ているけれど,翻訳の評判が悪い.

天才!  成功する人々の法則

天才! 成功する人々の法則


好きだからやる,というのは趣味だからこそ許されることで,これから自分の仕事にしていくためには,やっぱり何らかの意味で#1にならなければいけない.何が自分にとってのDipなのかを考えさせられた."Quit" という言葉が強調されているけれど,自分が#1になれる何かに集中するための「選択と集中」の指南書という感じで読んだ.

なお,The Dipも和訳も出ているらしい.不思議なことに和訳の方はAmazonレビューの評判が悪い.和訳が悪いのだろうか.タイトルを見ると「ダメなら〜」というのは著者の言いたいことではない気がする.「やってみてダメだったら」というのは遅すぎる.始める前にやめることを目指さなければいけない.

ダメなら、さっさとやめなさい! ~No.1になるための成功法則~

ダメなら、さっさとやめなさい! ~No.1になるための成功法則~