コンピュータが仕事を奪う
- 作者: 新井紀子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2010/12/22
- メディア: 単行本
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(2011-02-28読了)
ちょっと前に話題になっていたので購入していたけれど,積読になっていたので読んでみた.機械学習が言及されているよ,といわれていたので知っていたけれど,ここまで詳しく書かれているとは思わなかった.どちらかというと人工知能について学ぶ前に読むとよいかもしれない.
まずチェスの例を挙げて計算機が「探索」という仕事が得意であるということを説明している.続いて,数学の定理証明の例を挙げて人間は,「演繹」と「帰納」推論を行って定理の証明を行っているといい,最近の計算機は大量のデータを用いて帰納的な推論も可能になったという文脈で機械学習の話題を出していた.
演繹 => 帰納という人工知能の歴史の流れに沿って説明している.ただ,Amazon Mechanical Turkの話題が出てきたのには驚いた.まさかクラウドソーシングというキーワードが入っているなんて.
純粋に機械学習によって得られるのは、「こんな条件のときには、こうするとよい」という経験則の蓄積でしかありません
(p.174)
ここに書かれているとおり,機械学習は構築したモデルの種類,ハイパーパラメータなどによって「人間の事前知識」を利用しているが,アルゴリズムが行うのはデータから,人間の事前知識を最大限活かしつつ獲得した経験則である.最近特にこんなことを考えているので,この一文はとても印象に残った.
まとめると,計算機ができること,計算機でできるようになったことについて俯瞰しているような印象.
タイトルにはインパクトがあるし,帯にも「ホワイトカラーの半数が消える?」なんてショッキングなキーワードが書かれている.しかし,どちらかというと本書は高校生や大学1年生にぜひ読んでもらいたい.これをきっかけに数学やコンピュータサイエンスに興味を持ってもらいたいなぁと思う一冊.