怒らないこと2

怒らないこと 2―役立つ初期仏教法話〈11〉 (サンガ新書)

怒らないこと 2―役立つ初期仏教法話〈11〉 (サンガ新書)

(2011-01-03読了)

前著「怒らないこと」と一緒に購入.ちょっとタイミングが遅れてから読んでみた.相変わらず読みやすい.

例えば,電車で立っていて「あぁ疲れた,座りたいなぁ」と思ったときに初めて「苦」が生まれるのではなく,その前から苦しみは始まっている.このように人間は生きている限り常に苦しんでいる.そして,その苦しみに対抗するための感情が怒りなのだ,という点がなるほどと思った.

前半のポイントはこういうことだと思う.

  • 生きることは苦
  • 苦しいことに対して怒りが発生する
  • すなわち,人間は怒りを持たずに生きることはできない

適当に気に入ったところのメモ.

  • 苦を感じると「怒り」が起こる.ほしいと思うと「欲」が起こる
  • 管理しようとするから「怒り」が起こる
    • xxになってほしい,xxしてほしい
  • 怒りの処方箋
    • ポイントは「いったん停止」
  • 喜んでいるときの自分,苦しんでいるときの自分,どちらも自分のことだけれど,そこには全く異なる人格が存在する.このように自我というのは非常にあいまいなものである.


前著「怒らないこと」では,詳しく解説されなかった,8種類の怒りについて,本書では詳しく書かれている.

  • 怒りの種類
    • 1. dosa (ドーラ): 基本的な怒り
    • 2. vera (ヴェーラ): 激怒
    • 3. Upanaha (ウパナーハ): 怨み
    • 4. Makkha (マッカ): 軽視
    • 5. Palasa (パラーサ): 張り合い
    • 6. Issa (イッサー): 嫉妬
    • 7. Macchariya (マッチャリヤ): 物惜しみ
    • 8. Dubbaca (ドゥッバチャ): 反抗心

お釈迦さまは、「誰でも覚れますか?」という質問に対して、「言うことを素直に聞く人であること。自分の悪いところ、良いところを素直に話してくれる人であること。その二つの条件を満たした人なら、私のところへ来たら二〜三週間で覚らせてみせます」とおっしゃたことがあります。
(p.119)

ここで

  • 「素直に聞く人」はドゥッバチャの反対
  • 「自分のことを素直に話す人」はマッカの反対

すなわち,ドゥッバチャがあるともうお手上げということ.

ただし,反抗心がないということと人の話を鵜呑みにするということは違うので注意.本書では反抗心と探究心は違う,と書かれている.

また,「許し」は成り立たない (p.190) も興味深かった.そもそも人間は不完全で「自分が完全に正しい」ということはあり得ないので,「許す」という表現自体存在しえないと書かれている.「許す」と言った時点で「自分が正しい」と宣言しているようなものだ,というのは共感した.

全書に続き,仏教的な考え方を少しは知ることができたと思う.相変わらず著者のわかりやすい文章が素晴らしい.いくつかの点では,あれ?とそのまま受け入れることができない話もあり,前著よりも少し仏教色が強いと思う.読むのであれば,順番に読むと割と違和感なく読めると思った.