タイガーと呼ばれた子

(2008-10-15読了)

シーラという子の続編.
最初に書かれているが,美談で終わらせたくなかったとあるように,その後のシーラの人生はまた過酷なものだった.

本書最初の部分は「シーラの子」の要約になっているので,概要だけでよければこちらで事足りる−くらいよくまとまっている.

本書を読んで,シーラ自身が抱えている問題とは別に,思春期特有の問題も関係しているんだろうなぁ,と思った.

いずれにせよ,自分はシーラではないので,あれこれと考察することしかできない.以下の言葉は心に響いたので引用.

「そこにトリイがやってきて,あれこれ掘り起こしたんだよ.あんたってほんとうにそっとそのままにしておいてくれない人なんだね.自分でわかってる?」
(省略)
「わかんない.でもトリイがほうっておいてくれたら,あたしの人生はもっとずっと簡単だっただろうとは思うよ.この何年か,トリイはいろいろとあたしに悲しみの種をくれたからね.でも・・・」(省略)
「ほんとうのことをいえば,あたしが今まで出会った人みんなが−お母さんも,お父さんも,ここの人も,里親も,ソーシャル・サービスのもみんなそれぞれ余計なことをしないでいてくれたら,あたしの人生はずっと簡単なものになっていたと思う.だからトリイだけがどうこうっていうわけじゃないんだ」
(pp.409-410 シーラの言葉)

人と出会うたびに人生は複雑になるし,幸せと一緒に厄介ごともついてくる.自分にとっての人との出会いに対する考え方をよく表現している.


それにしても読みやすい.さらっと読めてしまう.トリイヘイデンの文章力もさることながら,翻訳も非常に良い.