ヒトデはクモよりなぜ強い 21世紀はリーダーなき組織が勝つ

ヒトデはクモよりなぜ強い

ヒトデはクモよりなぜ強い

(2007-09-14読了)

クモもヒトデも同じように複数の足を持っている.大きな違いは,クモは頭を切り落とせば死んでしまうこと.ヒトデはたとえ真っ二つに切り裂いても,再生してふたつのヒトデになる.
本書はクモを中央集権的な組織,ヒトデを権限分散的(分権的)な組織になぞらえて,それぞれクモ型組織,ヒトデ型組織と呼んでいる.最近の話題でいえば,P2Pファイル共有ソフトSkypeといったものが
まずアパッチ族をヒトデ型組織の典型例として紹介し,なぜインカ帝国アステカ帝国を2年で破ったスペイン軍がアパッチ族に敗れた原因について解説するところから始まる.


ヒトデ型組織の土台として

  1. サークル
  2. 触媒
  3. イデオロギー
  4. 既存のネットワーク
  5. 推進者

の5つが挙げられている.


面白かったのは,このようなヒトデ型組織にどのように対抗するかということ.本書では3つの方法が挙げられている.

  1. イデオロギーを変えさせる
  2. 権限を中央に集めさせる(牛型アプローチ)
  3. 自らを分権型に変える

特にこの牛型アプローチが面白い.アメリカが永きにわたり苦戦したアパッチ族を破った方法から命名されている.アパッチ族のナンタンにたくさんの牛を贈ることで,物質的な権限を発生させるという方法.それまで精神的なリーダーで,権力を持っていなかったナンタンが,牛という財産を持ったため,それまでのフラットな組織からヒエラルキーに変化した.

組織に所有権という概念が入ってくると、その途端にすべてが変わる。ヒトデ型組織がクモ型組織に変わるのだ。
(pp.168-169)


著者がウィキペディアに対してこのような危惧をしている.
企業の場合は中央集権的なトップを持ちつつ,ヒトデ型組織も取り入れたハイブリッドなものがいいんだよーみたいなことを書いてGEとトヨタの例を挙げている.ヒトデ型vsクモ型というストーリーとしてわかりやすいようにしているため,ここらへんの話をヒトデ型,クモ型という二言で片付けることはできないと思った.


会社のような組織はハイブリッド型がいいんじゃない?みたいなまとめかたになっているのでサブタイトルは誤解を招きそう.
ただ,本書を通してスタイルが一貫しており,ストーリーもわかりやすいため,とても読みやすい.さらっと読めてなんかためになった気がする本.ウィキノミクスやネットワーク思考あたりと併せて読みたい.


どうでもいいけれど,タイトルから「ヒトデ = スター型の中央集権的なネットワーク」「クモ = ウェブのような分散型ネットワーク」と想像したけれど,全然違った.