武器としての決断思考

武器としての決断思考 (星海社新書)

武器としての決断思考 (星海社新書)

(2013-04-28読了)

本屋で売れ筋本になっていたので購入.著者が「意思決定」の講義で行っている内容をまとめたものらしい.

メリット・デメリットの列挙と,選択肢の比較を行い,意思決定を行う方法論について書かれている.わかっている人には当たり前の話だが,とてもよくまとまっているので,さらっと読んでおくとよいかも.

大学に入学したての学生や高校生にこそ読んで欲しい一冊.チェックリスト方式で主張の論理展開に問題がないか検討する方法が紹介されているので,そのまま利用することで身につくようになるかもしれない.

最近,若い人間*1を見ていて「検討する」「判断する」という行為が苦手ということが気になっている.

「これどうすればよいと思う?」という問いに対して「わかりません」「何を勉強すればよいですか?」という回答を貰うと「今何をすればよいと思う? 何を勉強しておけばよかったと思う?」とそっくりそのまま返したくなる.今,この時点における,あなたの判断 (とその根拠) を確認しているのに.これについては聞き方にも注意するべきなのだけれど.

とにかくある時点における自分の行動に自分がその行動を選択した理由付きで言えればよいと思う.そこには他の選択肢に比べて良いと判断するための「検討」を行っているから.上司や周りのメンバーの指摘によってその検討が妥当であったか,抜けがないか,検討と判断の質と速度を向上していくので,どんどん検討と判断がうまくなっていくはず.

というような最近考えていることについて改めて考えさせられた

本書は良書である.他人にもおすすめする.これを読めば「決断」に関するノウハウがかなり理解できると思う.ただし,本書を読んだから「決断」ができるようになるかというと疑問が残る.スキル以前のレベルに問題があるのではないか.

あまり精神論にしたくはないのだけれど,姿勢の問題のような気がする.

読書とは格闘技です。さらっと読んで終わりにするのではなく、著者の言っていることを1ページ1ページ、咀嚼しながら読んでいってください。
(p.135)

読書に限らず,日々の議論において,その前提は妥当なのか? 主張の根拠は? それを論じることができるのか? といった疑問を持ち続けることが大事のように思う.

自分の場合は小さい頃から歳の離れた兄に理屈で言いくるめられたのが悔しくて,泣きながらその理屈が正しくないことを考えたりしていた (論破できる方法が見つかっても怖くて結局言い返せなかったのは今となっては良い思い出).どうやらその経験がトラウマになっているのか(笑)自分の根本思想を支えているようで,権威や権力を利用して言いくるめようとする行為に対してその論理展開が適切であるか,妥当であるか徹底的に検証,検討するという癖が自然と身についていた.実際にできるようになったのは入社後のような気がするけれど.理屈で言いくるめる兄にいじめられた経験を持てばよいのではないか,という冗談はさておき.この類の問題は知識ではなく,どう経験するかと思っている.

東大No.1ベストセラーと帯に記述されていたが,このような本を読まないと決断すらできない大学生が増えているということなのだろうか.

メモ

  • アンカリング (pp.49-50)

関連する読書記録

本書を読んで以下の読書を思い出した.併せて読むとよいかも.

*1:この発言がすでに老害な気が...