イシューからはじめよ
- 作者: 安宅和人
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2010/11/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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(2011-02-22読了)
イシューとは何か? 知的生産活動において「何に答えを出すべきなのか」ということについて書かれた本.
バリューの本質 = 「イシュー度」x「解の質」
- イシューとは?
- A) a matter that is in dispute between two or more parties
- (2つ以上の集団で決着のついていない問題)
- B) a vital or unsettled matter
- (根本に関わる,もしくは白黒がはっきりしていない問題)
イシューの定義を見て,「企業の研究者をめざす皆さんへ」(読書記録) の副題にもなっている "Research that matters" を思い出した.
イシュー度を意識せずに,いきなり仕事の解の質をあげようとすることを「犬の道」と著者は言っている.仕事をやっている感はするけれど,そのままでは永遠にバリューのある仕事はできないと述べている.
「カナヅチを持っていればすべてのものがクギに見える」
という言葉が印象に残った.研究においても,ある手法を理解して自分で実装してカナヅチを手に入れたとき,いろんな問題にそれを試してみたくなる.人間の心理を的確にとらえた言葉であり,自戒の念として覚えておきたい.
「生物学には質問を肯定する結果が出ないと何の役にも立たない実験が多い。このような実験のことをアメリカの科学者は Fishing expedition (魚釣の遠征) という。魚が釣れなければくたびれもうけとなるという意味である。理想的な実験とは、論理も実験も簡単で、どんな結果が出ても意義のある結論ができるものである」(小西正一)
(p.182)
入社直後はとりあえず提案手法を試して,うまくいかなかったら残念,パラメータを変えて再実験or手法を変えるというようなことを盲目的に行っていたような気がする.「なぜうまくいくのか?」という観点を持ってとりくむようになってようやく,提案手法の結果が良くなくても何らかの知見が得られるようになったと思う.
さて,最後に実は本書のタイトルを見たときに思い出した言葉があったので,ちょっとそれについて書いておく.
僕の出身学科は理工学部の経営工学系の学科で,そこでは生産管理やオペレーションズ・リサーチのようなことを学んできた.学部卒業式の日に定年を迎えたインダストリアル・エンジニアリング (生産管理) を専門とするN教授が退官挨拶を行った.
檀上に立つなり,後ろの黒板に向かって,白いチョークで大きく
プラブレム イズ
ボスデス
と書いて,話を始めた.
この言葉は,生産管理で著名なマンデル博士が大学に客員教授として滞在されたとき行った全ての講義の一番はじめに,必ず黒板に書いた言葉だという."Problem is a boss." の日本語訳? で,「問題を意識しなさい」「まずはじめに問題ありき」ということを学生に意識してもらったために,何度も繰り返し伝えたという.その講義を聞いていたN教授は,それ以降常にこの言葉を座右の銘にして研究と教育に取り組んできたという.
「イシューからはじめよ」という本のタイトルを聞いたときに「プラブレム イズ ボスデス」というこの言葉が思い浮かんだ.
なお,issue と problem の違いがわからなかったので,LDCE で調べてみた.
issue n.
1. a subject or problem that is often discussed or argued about, especially a social or political matter that affects the interestes of a lot of people.
problem n.
1. a situation that causes difficulties.
2. something wrong with your health or with part of your body.
problemの方が「問題を引き起こしている」という観点が強いような気がする.そういう意味で,本書が伝えたいのはproblemではなく,やはりissueのような気がする.
帯に書いてあるように根性に逃げないように,イシューを意識していきたい.
読書メモ
- よいイシューの3条件
- 本質的な選択肢である
- 深い仮説がある
- 答えが出せる
- コールドコール
- 知らない人に電話でインタビューを申し込むこと
- 日本では社外の人の意見を聞くことが少ない
- 空・雨・傘
- 空: 課題の確認
- 雨: 課題の深堀り
- 傘: 結論
- 分析とは比較である (p.150)
- 定量分析の3つの型
- 1. 比較
- 2. 構成
- 3. 変化