2009年の振り返り

購読しているブログの方々が2009年を振り返っているので,僕も振り返ってみることにした.
ブログ記事や手帳を眺めながら振り返ってみると,あのときの自分はこんなことを考えていたんだなぁ,フフッと思ったりする.

気がついたら技術的内容以外の方が量が多くなってしまったけれど,まぁいいか.
どうでもいいけれど,2009という響きは個人的にとても好きだった.2007年のときも同じことを言った気がするので単純に奇数萌えなだけかもしれない.

1月

年明け早々DEIM2009の実験に追われる.初めて検索エンジンに絡んだ研究に携わり,FT-searchというオープンソース全文検索エンジンソースコードをいじる.恥ずかしながら,オープンソースのコードに手を入れるという経験も初めて.1000行以上のソースコードを扱うのも初めてだったので,それ自体とても有意義な経験となった.

新年会ラッシュの中,昨年WebDB2009の研究を国際会議に投稿するために原稿執筆.

会社同期とスノボ旅行.実に3年ぶりのスノボだったけれど,普通に滑れて驚いた.しかし足腰が弱っており,けっこう転んで腰を打った.この頃は腰に違和感を感じる程度で済んだものの,後の悲劇につながることになる.


2月

国際会議締切とDEIM最終原稿締切であっぷあっぷした.そんな中,昨年から参加していたIIR輪講が無事にゴール.お金を払ってもいいくらい有意義な勉強会だった.参加者の皆様には心から感謝している.勉強会ってすごいなぁと思った.DEIM2009研究の経験もあったので,IR1年生を無事に終えて,IR2年生になったかな? と自覚しはじめる.

その気持ちを忘れないうちにと書いた情報検索ことはじめ〜研究者編〜にこれまた反響があり,うれしくなって小躍りする.

1月のスノボが楽しかったので,もう一度スノボ旅行に行く.そこで悲劇が起こる.1月の時に痛めた腰を更に強打し続け,ある転倒をきっかけに立てなくなる.激痛に耐えながらボードを脱いで,なんとかふもとまで歩いたものの,以後まともな生活ができなくなる.



3月

部署旅行で訪れた富士通工場にて実働する国内最古の計算機であるFACOM-128Bを見る.当日はなんと当時のエンジニアだったOBの人たちがメンテナンスをする日でもあり,目の前で様々な操作をしてもらった.とにかく感動した.心地よいリレーの音は今でも耳に残っている.

DEIM2009にて発表.新たな出会いもあり,とても楽しかった.最終日のカートが最高にエキサイティングだった.

3月後半はJSAI2009に向けて実験.現在の研究テーマに本格的に取り組むようになる.

それとは関係なく文字列探索に興味を持った.メインテーマとは全く関係ないけれど,実装力を鍛える効果もあるだろうと思って,ながら勉強をしていたけれど,いつの間にか放置されていた.勉強を始めるにあたって書いたブログ記事が少しだけブックマークされた (文字列探索スターターキット)


4月

手帳を見るとそれほど忙しそうには見えないけれど,年度始めということで,色々ばたばたしていた気がする.

まずDEIMネタを国際会議に投稿.査読結果を見て,論文は書くだけではダメということを改めて知る.JSAI2009締切でばたばた.


IIR輪講参加メンバーを中心に新たに始まったMG (Managing Gigabytes) 輪講に参加.IIR同様,非常に有意義な勉強会になった.

ブログを見ると,多バイト文字コードの圧縮の記事なんかを書いてたりして,圧縮に興味を持っていたらしいことがわかる.


腰痛が更に悪化したのもこの頃.片足全体がしびれ,鈍痛に悩まされる.坐骨神経症というやつになったらしく,整体などに通うも症状はほとんどよくならず.極度の運動不足によるものだと整体師に怒られたのもこの頃.


5月

年初から続くばたばたがようやく収まったのが5月.コンピュータサイエンスゆとり世代である僕が,ベテランの方々が常識として知っていることをたくさん学んだのはこの頃だった気がする.

そういやCのライブラリも書いたことないなぁ,と本当に基本的なことから勉強をすることにした.その過程でふつうのLinuxプログラミングを読んで,システムコールとはなんぞやということを知る.今までいちプログラミング言語だったCが,特別なものに見えるようになった瞬間.

この頃から,OSに興味を持ってタネンバウム先生の本を購入するも一切読んでないのは秘密.


腰は相変わらず痛かった.症状の改善が見られず,相当辛い日々を送った.きちんと座ることができないため,生産性に大きく影響する.集中できない日々が続いた.



6月

本業がばたばたしていた月.なんだか学園祭準備のような青春じみた忙しさだった.今でも良い思い出.JSAI2009発表.讃岐うどんが美味美味.

忙しくなると現実逃避をするのが僕の性質のようで,新しく出版されたCroft先生のIR教科書を読み始めた.何を思ったのかパワーポイントにまとめてブログ記事にするも,2章で挫折する.3章まで読んだのだけれど,まとめるのが途端に面倒くさくなって停滞中.

腰の痛みがピーク!ついに一定時間以上座ることができなくなった.ひどい時は床に寝転がってノートPCで作業をしていた.この頃は本当に辛くて,毎日本当に死にたかった.

この頃病院でもらった痛み止めの相性がとてもよく,痛み止めが効いている間は痛みがほとんどなくなった.この痛み止めに出会うことができなかったら,多分僕の精神はやられていたと思う.(十分やられたわけだが)


7月

MG輪講に参加している方に紹介されて生駒PRML読書会 (*1) に参加する.MG輪講とはまた違った参加メンバーで良い刺激になる.学生時代から機械学習をツールとしてしか使っていなかったため「そうだったのか!」の連発.己の数理能力の低さに愕然すると同時に,今からでも遅くないという感触を得たのは非常に大きかった.
(*1) 名前は生駒とついているけれど,生駒は関係なく,主に墨田区で開催される.


文末表現の違いを分析するなどした.その前に行ったエントロピー計算もそうだったのだけれど,思いついたらすぐにこういう実験ができるようになっていた.普通の学生ならば当たり前にできるのだろうけれど,ゆとりの僕にとっては非常に大きな一歩だと思う.思いついたことを実行する力がついたのだなぁ,としみじみ感じた.

8月

8月の一週目に夏休みを取り,勉強会ラッシュだった.

まずは研究室合宿にOBとして参加.偉そうなことをつらつら述べる.B4の研究内容が自分たちのときと比べて素晴らしすぎて感動.懇親会で先生の目の前で後輩に亀甲縛りにされたのは今となっては良い思い出.

つづいてSIGMOD2009勉強会に参加し,indexingセッションを担当.普段SIGMODのpaperを読まないので非常に良い経験になった.なかなかスライドが完成せず,最後は漫画喫茶に籠って徹夜で仕上げた.担当した論文の周辺知識が相当足りなかったので発表自体はぐだぐだで相当死にたくなったけれど,今となっては良い思い出.

その後にPRML読書会の担当もあり,これまた理解不足でぐだぐた発表になり,拙速主義になりつつあることを危惧.以降気をつけようと厳しく自戒.


8月15日は昨年免停を食らった僕にとっては僕の (国家権力に対する) 終戦記念日でもあった.無事に一年間無事故無違反を通したので,これで綺麗な身になった.僕の年齢で過去3回免停になっている人間はそうそういないと思う.


8月後半はシーズン終了ぎりぎりだったので会社の同僚と富士山.ご来光を拝むために夜通し登る.小雨が降り続け,震えながら登った.相当辛かったけれど,楽しかった.登山前後の温泉や,吉田うどんなども良い思い出.富士山のために一週間毎晩走ったおかげで,腰の調子も大分よくなってきた.

僕がM2の頃から研究室に来たフランス人留学生が帰国するので飲み会に参加.じーんと来るお話もあり,なんだか幸せな気分になった.


8月は思い出ポイントがたくさん溜まった月であった.


痛み止めがなくても活動できるようになったのもこの月 (だったと思う) .軽度のヘルニアは3ヶ月程度で治るという教科書通りの回復を見せ,人生に希望が見える.本当に健康て素敵だと思う.



9月

一ヶ月の間だけ指導者という立場になった.相手にどう思われているかはわからないけれど,僕個人としては思い出に残る一ヶ月だった.いろんなことに頭を悩ましたけれど,今となってはいい思い出.

WebDB Forum 2009に投稿.このときも相当ばたばたした.

PRML Hakathon#1に参加してCでニューラルネットワークを実装した.バグをなかなかとれずに最後の最後でバグを発見.無事にXORを学習することができた.本当はNN実装をすぐに終えて,RankNetという順序学習アルゴリズムを実装したかったけれど,NNで時間切れ.
これについてブログ記事を書くのを忘れていたと今さらながらに気がついたので,実装したものについては後日アップする予定.


同期と丹沢湖にキャンプ.原因は割愛するけれどお尻に一生消えないであろう火傷を負った.若さゆえの過ちだと思う.

先輩の結婚式2次会で司会と出し物を担当.出し物は相当すべり気味だったけれど,あそこまでやるのはなかなかいないと自負している.先輩から御礼の品として鍋用すっぽんを貰ったので,寮の同期で食す.普通においしかった.


思い返せば9月も思い出ポイントをたくさん集めた月であった.



10月

9月のばたばたから解放されたので,今まで勉強したことのないネットワークプログラミングを少し勉強した.以前挫折したときは,インクルードするヘッダファイルがよくわからなかったし,普段使わない名前の関数を使うからウボァと思っていたけれど,システムプログラミングの基礎を勉強した後にやると全く違って見えた.

あまりにその違いに感動し,詳解UNIXプログラミングを購入.積んどくになっているのは秘密.


また今まで学んだことを詰め込んだ学習用全文検索エンジンを作ろうと思ってお手軽転置インデクスを用いたなんちゃって検索エンジンのブログ記事を書いた.

ちょうどその頃岡野原氏がMiniseというコンパクトながらきちんとした全文検索エンジンを作成し,記事がWebDB+Pressに掲載され.なんちゃって検索エンジンの存在意義がなくなり,リアルorzをした.

なんちゃって検索エンジンについては他人のためではなくて,自分のためにやることなのだからと思い直し,来年こつこつ作っていこうと考えている.


会社のバスケ部合宿に一日だけ参加.ガチンコ部活ばりの練習量に体が悲鳴をあげる.次の日から数日間.階段昇降が相当辛かった.今年一年悩まされ続けた腰の違和感がほとんどなくなる.運動って本当に大事.


思い返せば (本業的には) 反省すべき月.この月に泥臭いことをさぼってしまったことが遠因だと痛感している.同時に余裕ができるとベクトルが違う方向に向いてしまう

巡り巡ってそれは必ずプラスになるのだけれど,短中期的観点から言えば,最善の方針とはいえないので,余裕が出来たときに遊んでしまう癖をなんとかしたい.


11月

前半の2週間は研修.アフター5を満喫しまくる.生まれて初めて横浜中華街に行く.食事って本当においしいですね.

WebDB Forum 2009にて発表.JSAI2009に続き,朝イチ発表.WebDBの会場は母校...のはずがそこに母校の面影は全くなかった.たった1年半でここまで変わってしまうとは.愛する矢上は変わっていなかったので安心した (?).

中学同級生の結婚式でクラスメイトからのプレゼントとして,かなり本格的な大人のおもちゃを渡す.「家に帰るまで開けちゃだめだよ」といって別れて以降,彼から連絡が無いのはここだけの秘密.
そういえば,ここ2年くらい結婚式づいている.呼ばれた会だけで先輩3回,同期2回.この年になるとそんなもんですかね.


12月

本業で想定外の問題が起こり,本当に追いつめられた月だった.大失敗をしてしまったけれど,結果的には研究者として大きく成長できたと思う (そう願いたい) .今まで見えなかったことがたくさん見えるようになってきたので,研究者1年生から2年生になれたのかな? と思っている.

この気持ちを忘れないうちに,研究プロセスをもう一度まわしてみたいと感じた.けれど,今年は一休み.


後半は忘年会ラッシュ.今年は6回の忘年会があり,5日連続忘年会という凄まじいスケジュールだった.

急に思い立って高校のときの同級生の同窓会兼忘年会をやる.突然の誘いにも関わらずけっこうな人数が集まってくれて相当嬉しかった.みんなそれぞれの道を歩んでいてしみじみ.ヒトデを使って受精の研究をしている同級生が3時間くらいずっと精子について語ってくれて,相当楽しかった.


11月後半から12月にかけて本業が忙しくなると同時にErlangに現実逃避をしていた.文法にクセがあるものの,プロセス間通信がこんなに簡単にできるとは知らなかった.嬉しくなって分散フィボナッチ数計算を実験してみたのだけれど,全く反響がなく,個人的にはかなりショックだったことは秘密.

まとめ

最初は技術的な内容だけに留めようとしたのだけれど,どんどん思い出があふれてきたので,長くなってしまった.最後になんとかうまくまとめることにする.

2009年は要するにこんな感じだったと思う.

  • (1) ゆとりからの脱却
  • (2) 腰痛との闘い
  • (3) 対外活動 (学会・勉強会) での学び
  • (4) たくさんの思い出
(1) ゆとりからの脱却

検索エンジン基盤の研究やシステムプログラミングなど,いろんな意味で計算機の基盤に近い技術を学んだ.それに伴ってゆとりが知らなかったことをたくさん学ぶことができた.

(2) 腰痛との闘い

とにかく腰痛との闘いの一年だった.しかも自分の不摂生が原因なだけにこの点は猛省している.幸か不幸か腰痛が本当に辛かったおかげで,その他のあらゆる辛いことに対してストレスを感じることが少なかった.腰痛が回復するにつれて普通にストレスを感じるようになったのが唯一残念だった点.

(3) 対外活動 (学会・勉強会) での学び

対外活動は本当に学びが多い.交流という意味でもそうだし,技術を習得した人間が発する一言は本当にためになる.僕のような若輩にはオフレコトークが刺激的だけれど.


回数が多けりゃいいもんじゃない,と拙速を反省したばっかりだけれど,回数をまとめておくことで自分自身に対する自分がんばったんだよ指標にしてみる.

  • 学会発表3件 (DEIM2009, JSAI2009, WebDBForum2009)
  • SIGMOD勉強会 (Indexingセッション担当)
  • IIR輪講 3回 (担当1回)
  • MG輪講 9回 (担当1回)
  • PRML読書会 6回 (担当3回)
    • PRML Hakathon #1参加

去年に比べて回数は倍増しており,その分得られたものは大きいと感じている.

社内の輪講もあるため,本腰を入れて参加するのはこれくらいがちょうど良いかなぁと感じている.来年はこれに加えて,情報収集を主目的とした軽い参加の勉強会を何回か入れてみようかな,と考えている.

来年は国際会議と論文誌件数を増やします,ハイ...

(4) たくさんの思い出

俺ってリア充じゃね? と勘違いするほどイベント尽くしの一年でもあった.学生の頃に「社会人の方が遊びも楽しいよ」と聞いたことがあるのだけれど本当にその通りだった.

今年を振り返ると思い出が集中している8月9月にスキルアップやアウトプットが少ないことに気がついたので,バランスよく遊べるようにしたいなぁと思った.1,2ヶ月アウトプットなくても気分転換できるならその方がいいのかなぁ.


反省点

反省すべき点はたくさんあるけれど,ここでは以下の3つに絞りたい.

  • (1) 健康が大切
  • (2) 中期的な継続によるアウトプット
  • (3) 読書の継続
(1) 健康が大切

本当に何よりも健康.特にこの2年で恐ろしいほど肉体が衰えたので,定期的に運動をするための仕組みを考えないとなぁと思っている.

(2) 中期的な継続によるアウトプット

今年に限らず,今までの自分を振り返ると割と瞬発力に頼ったアウトプットが多いと思っている.継続的な活動によって今まで達成不可能だったアウトプットをしたいなぁと考えている.

(3) 読書の継続

社会人になってから (書籍の) 読書量がかなり減っている.読んでいる論文量はそれ以上に増えているとは思っているものの,一定水準は保ちたいと思う.学生の頃は毎年100冊をなんとかキープ出来ていたけれど,2年連続で大幅に下回ってしまったので,来年は月5冊.年間60冊を目標に読んでいきたいと思う.