坐る力
- 作者: 齋藤孝
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/01
- メディア: 新書
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(2009-02-11読了)
齋藤孝の座ることについての本.
杉本えつ子「武士の娘」からの引用部分がなぜか印象に残った.
お稽古の二時間のあいだ,お師匠さまは手と唇を動かす外は,身動き一つなさいませんでした.私もまた,畳の上に正しく座ったまま,微動だもゆるされなかったものでございます.
(p.16)
唯一度,私が体を動かしたことがありました.丁度,お稽古の最中でした.どうしたわけでしたか,落着かなかったものですから,ほんの少し体を傾けて,曲げていた膝を一寸ゆるめたのです.すると,お師匠さまのお顔にかすかな驚きの表情が浮び,やがて静かに本を閉じ,きびしい態度ながら,やさしく「お嬢さま,そんな気持で勉強はできません.お部屋にひきとって,お考えになられた方がよいと存じます」とおっしゃいました.
(p.17)
うまく説明できないけれど「これだよ,これ!」と僕の中の誰かが叫んだ.
自分のことを思い返すと,小さい頃の僕は机に向かって勉強するのが得意な方だった気がする.しかし,高校に入り部活漬けになって机に向かうことが少なくなると,あっという間に机に向かうことが苦痛に感じるようになってしまった.
これは,マルセル・モールによる「身体のハビトゥス」でも説明できる(pp.123-125).身体は心よりも習慣に影響されやすいのではないかと感じた.
少し違う例ではあるが,高校時代の恩師である体育教師(バスケ部監督)は,常にこう言っていたことを思い出した.
「3日練習をせずに失った勘を取り戻すのに1ヶ月.10日休んで失った勘を取り戻すのに3ヶ月かかる.」
この考え方のおかげで(せいで)バスケ部は3日以上連続した休みは年末年始しかなかったそうだ(僕は幸い?バスケ部ではなかった).
いずれにせよ「習慣」というのはやはり大事なのだなぁ,と再認識.
僕もご多分に漏れず一日の大部分を座って過ごしているので,椅子や座り方に気をつけよう,と思った.