ニンテンドーDSが売れる理由―ゲームニクスでインターフェースが変わる

ニンテンドーDSが売れる理由ゲームニクスでインターフェースが変わる

ニンテンドーDSが売れる理由ゲームニクスでインターフェースが変わる

(2007-09-06読了)


わかっていることだが,体系だって書かれていることが重要


「ゲームを科学した」という意味のゲームニクスという言葉を提唱し,ファミコンに始まる家庭用(業務用)ゲーム機器のインターフェースから,ゲームデザインまでを考察している.著者の提唱するゲームニクスは既存の分野の複合的な位置づけなため,どのような研究・技術が必要かということを考えやすいように,著者はゲームニクス理論の体系化を行っている.個人的には,この体系化が本書の一番価値ある点だと思っている.


認知工学にもとづいてデザインを考察するが,認知工学としていささか浅い気がする.実際には多種多様のユーザがいるが,そのようなユーザの多様性については考えずにインターフェースやゲームデザインについて考察しているため,「売れたゲームがどのようなデザインになっているのか」という結果論になっている.


この本の特色すべきは,ゲームにクスと銘打つだけあって,ゲームニクス理論の各要素の分類・体系化を行っていることである.これにより,個々の要素が既存の研究分野のどのような技術やアイディアを用いればいいのか考察しやすくなっている.


関西の中学で,毎朝DSの英語づけかなんかをやったら英語の成績があがった,と言うニュースが半年くらい前にあったような気がする.個人の学習能力如何よりも,「勉強がいやだ」というモチベーションを阻害する要素の方が大きな壁っぽいので,それらを取り除くツールとしてゲームを用いるのは案外有効かもしれない.もしかして,中学生というのがミソで,これが小学生だったり高校生だったらダメなのかもね.教育については最終章でちらりと書かれている.


これまたcatchyなタイトルだが,タイトルの答えは本書では見つけることができないと思う.現在の家庭用ゲームにおいて,ほぼデファクトスタンダードになっているゲーム機器のインターフェース,ゲームのインターフェースは,どのような目的でそうなっているのか.そしてどのようなインターフェースが良い(と思われているのか)ということを知ることができる.


認知工学,インターフェース系の研究のとっかかりとしてはよいかもしれない.これこそシリアスゲームならぬ,なんとやら?
ちなみに「シリアスゲーム」という言葉は知らなかった.