ウェブ社会をどう生きるか
- 作者: 西垣通
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/05/22
- メディア: 新書
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(2007-06-29読了)
そもそも情報は伝わらない,という1章から始まり,
基本的には情報というのは,以下の3つに分類することが出来る
- 生命情報(広義の情報)
- 遺伝情報など,生態系の中に含まれる不可視の情報全てをひっくるめた情報
- 社会情報(狭義の情報)
- 人間の社会で通用する情報.生命情報を人間が観察し,記述したもの.
- 機械情報 (mechanical information)(最狭義の情報)
- 例えばデジタル情報のように記号によって記述された情報.時間が経過しても変化しない.
個体に対して「機械情報」を提示することによってコミュニケーションが取れるわけではない.
結局,ウェブ上で保存されるのは機械情報だから,そればっかりを集めても限界あるけん,という主張
階層的オートポイエティック・システムの話も少々.
「上位のオートポイエティック・システムを観察しているとき、下位のオートポイエティック・システムはあたかもアロポイエティック・システムのように作動する。一方、下位のオートポイエティック・システムを観察しているとき、上位のオートポイエティック・システムからの影響を認知できない」
(西垣通『基礎情報学』NTT出版)
当たり前といえば当たり前.
多分,本書で言いたいのは,ともすれば計算機科学者が陥りやすい,「情報は小包につつんで伝達することができる」という考え方に警鐘を鳴らし,
結局のところ他者との「関係」と「相互作用」によって自発的に生まれるものである,ということではないでしょうか.
本当の「知」とは、あるいは「情報」とは、環境のなかで身体を動かし、相互作用することによって生まれてくるものだ、という主張が現れます。
まさに関係としての情報が、こうしてはっきりと浮かび上がってくるわけです。
(p.150)
また,情報学的には「客観的世界」は存在しない,というくだりも同意
それぞれの個体がもつ主観的世界の重なり合わせである多元的世界(多重的世界)によって成り立っている,ということを(おそらく)初めて主張したのは20世紀はじめの生物学者であるヤーコプ・フォン・ユクスキュル.
彼は,生物を内部から「主体」として眺め,それぞれが独自の「環世界(Umwelt)」に住んでいると主張した.
論文では客観性が重視されるのだろうけれど,アプリケーションを考えると主観性が重要なわけで,このような小難しい話を持ち出すまでもなく客観的世界ってのが我々にとって重要なの?って常に自分に言い聞かせたい
これだけだとあまり「ウェブ社会〜」が関係していないように思える.本書のタイトルとどう結び付けているかというと
ウェブ礼賛論者たちの,計算機によって知の体系化を行うことができる,という謳い文句に疑問を投げかけ,
計算機の限界,そして計算機の活躍の場は,「知の提供」ではなく,「場の提供」であると結論づけている.
ところどころでウェブとインターネットを逆に勘違いしているんじゃないか??という記述や
少し論理がおかしいところもあるが,主張はシンプルで「情報は伝わらないものである」という
最初の主張は思わず頷いてしまう.
自閉症とロボットの類似,特に自閉症の人間は「フレーム問題」を抱えているのではないか,という考え方は新鮮だった.
キーワード
- 生命情報
- 社会情報
- 機械情報
- オートポイエーシス
- オートポイエティック・システム
- アロポイエティック・システム