どう書くか―理科系のための論文作法

どう書くか―理科系のための論文作法

どう書くか―理科系のための論文作法

(2010-03-04読了)

会社の先輩に教えてもらった杉原厚吉先生による論文の書き方に関する本.前半部分は「差読者」の気持ちが書かれており,ノリとしては先日読んだ「大学教授という仕事」同様に差読者の立場があまりわからないうちに読むと色々参考になると思う.


本書の中では,「はじめに」の書き方と,「文の道標」の部分が特に心に残った.論文の書き方,文章の書き方に関する本は何冊か読んできたが,本書のおかげで,具体的にどのように論文を書くか,というイメージをつけることができた.次回の論文執筆は,これらの規則をできるだけ精確に反映して書きたい.


後半部分は,記法やテンの打ち方など,「ここまで気にするか?」というレベルで説明されている.テンの打ち方はすぐに身につく気がしなかったので,今後の課題ということで...

「はじめに」の項目 (p.34-)

項目1. ボロノイ図の重要性
項目2. ボロノイ図の計算法の歴史
項目3. 従来の計算法の欠点
項目4. 本論文で提案する新しい計算法
(p.34)

  • 本題に近い順番は,(4)->(3)->(2)->(1)
  • 順番に並べると,(1)->(2)->(3)->(4)
  • 正解はないけれど,(3)から書き始めるとバランスがよい
    • (1), (2)を少しだけ含めた(3)'にするとよい
    • 解くべき課題が何かであるかを読者に知らせることもできる

標識による道案内 (p.71-)

文と文をつなげる論理の分岐.文章の道筋に通行禁止の立て札や一方通行の標識があると,誰が通っても同じ道をたどることができる.本書では,以下の15種類の道標を例を交えて紹介している.

道しるべチェックリスト (pp.78-81)
  • (1) 帰結を表す道標
    • [句・節] したがって; それゆえ; その結果; だから; そのために; だからこそ; そんなわけだから
    • [文] 以上の理由から,次のことが導かれる.
  • (2) 理由を表す道標
    • [句・節] なぜなら; なぜかというと (「...だからである」の締めくくりの言葉が必要)
    • [文] その理由は次のとおりである.なぜかというと,次のような事情があるからである.
  • (3) 逆説または対照を表す道標
    • [句・節] しかし; それにもかかわらず; けれど; がしかし; というのに; 逆に; 一方; それに対して; 反対に; もう一方では; それとは逆に; これまでと異なり
    • [文] ところが,もう一方で次のような事実も観察された.
  • (4) 強調したいところに焦点を合わせる道標
    • [句・節] 特に; ここで注目したいのは; 必要なことは; 重要なことは; 忘れてならないのは; ことわっておくが
    • [文] ここで重要なのは次の点である; ここで忘れてならないことがある; 特に次の点に注目していただきたい.すなわち,….
  • (5) 情報の追加を表す道標
    • [句・節] その上; それに加えて; さらに; もまた
    • [文] それだけではない.
  • (6) 仮定を表す道標
    • [句・節] もし…なら; 仮に…だとしたら; …の場合には
    • [文] ここで…と仮定しよう.
  • (7) 動機・目的を表す道標
    • [句] この (目的の) ために
    • [文] これを達成するためには,次の手順に従えばよい.
  • (8) 類似または相違を表す道標
    • [句・節] 同様に; 同様にして; 同じように; それと平行して; それとは違って; これと異なり
    • [文] 同じことは次の場面でも成り立つ.すなわち,….
  • (9) 例示を表す道標
    • [句・節] たとえば; 例をあげると; 例で説明すると
    • [文] このことの典型的な例を次のとおりである.
  • (10) 言いかえや要約を表す道標
    • [句・節] つまり; すなわち; 要するに; まとめていうと; 要は
    • [文] 以上の議論を要約すると次のようになる.
  • (11) 話の転換を表す道標
    • [句・節] ところで; さて; ここで; 次に; それはそうと; 話をもどすと; 余談であるが
    • [文] この問題の考察はこれくらいにして,さきほどあげた第二の問題点の検討に移ろう.
  • (12) 古い情報を確認するための道標
    • [節] すでに見たとおり; これからも分かるように; 上で示したように; これまで見てきたのは; 前節で示したことであるが; 思い出していただきたいのだが
    • [文] ここでこれまでの議論を振り返ってみよう.
  • (13) 有効範囲を示す道標
    • [句・節] 今までは; これ以前は; 前の章では; この章では; これまでは; ここからは; これ以降では; この論文全体を通して; しばらくの間は; 特に断らない限り
    • [文] この条件は本論文全体に渡って満たされるものとする.
  • (14) 位置確認のための道標
    • [句・節] 幸いなことに; 残念ながら; 一般に; 通常は; もちろん; 明らかに; 確かに; 自明に; 一般性を失うことなく; この観点から; よく知られているように
    • [文] これは当然である.
  • (15) 列挙を表す道標
    • [句] まず,次に,さらに,…,最後に; 第1に,第2に,第3に,…
    • [文] この方法には次の三つの利点がある.第1の利点は….第2の利点は….第3の利点は….

その他メモ

  • タイトルには「いかに」は書かないほうがよい (p.32)
  • 仮定の及ぶ範囲
  • 文字の結合
  • テンの打つところ (難しい! 今後の課題)
  • ローマン体とイタリック体
  • 数式も文である
  • ハイフン,エヌダッシュエムダッシュ,マイナス記号は違う
    • TeX記法では,"-", "--", "---", "$-$"