人を動かす質問力
- 作者: 谷原誠
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/07/10
- メディア: 新書
- 購入: 28人 クリック: 228回
- この商品を含むブログ (68件) を見る
(2009-10-09読了)
最初に「質問をされると,思考し,答えてしまう」と書いてある.
あぁ,その通りだと思った.本書はこの一言に集約されているような気がする.
本書は「質問力」という方法によって,以下の目的を達成するためのハウツー本である.
- 思いのままに情報を得る
- 人に好かれる
- 人をその気にさせる
- 人を育てる
- 議論に強くなる
- 自分をコントロールする
人は,他人から押しつけられることは嫌いですが,自分で決めたことには従順に従います.意見を押し付けず,相手が動きたくなるような質問をしましょう.
同じように,人をその気にさせるには,議論で相手に勝ってはいけません.
(p.98)
最後の一行を肝に銘じよう.僕は議論が大好きで,議論は議論と割り切るので,白熱した議論をしても相手に対して感情を抱くことはほとんどない.その一方で相手を感情的にさせてしまうことがしばしばあった.議論が目的ではなく,何かの目的を達成する手段の場合には,「議論に勝つことが目的ではない」ことに気をつけよう.
自分の意見を通すこと != 議論に勝つこと
自分の思うように進めること != 自分の意見を通すこと
を再認識.
ソクラテスは相手の言質を取り,その言質と矛盾するような結論に追い込んでいく質問を繰り出したという.矛盾のない答えを引き出す質問をしてもよい質問側と,矛盾のないように答えなければいけない回答者側,どちらが難しいか明らかである.
これについては,大学時代の先輩を思い出す.その先輩はとにかく質問を繰り返す.ほとんどの場合が彼の好奇心に基づくものだけれど,いじわるな場合には余計にたちが悪い.それに答えていると,いつの間にか自己矛盾に気がつく.最初のうちは非常に辛かったけれど,おかげでずいぶん鍛えられたし,挑発的な発言にも感情を抑えられるようになった,と思う.まだ不十分だけれど.
「大切なことは質問をやめないことだ」 --- アインシュタイン
最後の章に書いてある「自分自身への質問」というのはもちろん研究にも大切なことだと思う.
僕は弱い人間なので,一度結果が出ると「これでよいに違いない」と手を動かすのがおっくうになってしまう.けれども,もっと良い研究をするためには「なぜこうなるのか」「本当にこれでいいのか」という疑問を自分で投げかけ,自分で答える必要がある.
自分自身が自分の研究に対する "査読者" になることができれば,今より良い研究ができるはず.
言うは易し...